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17歳で中国を出た。シンガポール、ドイツ、インドネシア...縦横無尽においかける私のキャリア

話を聞いたらいろいろ出てきそう。なんだかほじりがいがありそうだ。

ABEJAには、そう思わせる人たちがいます。何が好きで、どんなことが大事だと思っているのか。そんなことを聞き書きしていきます。

今回は蒋聿敏(Yumin Jiang)さん。17歳で故郷中国からシンガポールに留学、ドイツやインドネシア、香港でも暮らしたことがあります。2018年、ABEJAシンガポールに入社、2019年秋からは米シリコンバレーのオフィス立ち上げにもかかわっています。

国々を飛び回る中で見えてきたこととは。


ユミン:たくさん勉強して、いい大学に入って、大きな企業に就職する。

私が中国で高校生だった2007年ごろ、同級生は皆、そんなレールの上を走っていたように思います。

自分はというと小説や映画が大好きで、物語の中の主人公たちのように、冒険に憧れていました。例えば、16歳の時に読んだ”Into The Wild”(邦訳:荒野へ)という小説。自分も「パッション(湧きあがる情熱)」を追いかけながら生きていたいと、悶々と悩む日々が続きました。

一人っ子で育ちました。甘やかしてもらえる一方で、いつも両親になにかとコントロールされるのが息苦しくもあった。10代の頃はいつも、今の環境を抜け出してどこか別の場所へ行きたいとおもってました。

当時、通っていた高校が南ドイツの高校と姉妹校提携を結んでいて、夏の間の交換留学がありました。すごく楽しそうで、めちゃくちゃ行きたかった。でも、両親に「お金がない」「行く必要がない」と反対されて、行けませんでした。

転機は急にやってきました。

通っていた高校で、シンガポール国立大学(NUS)の説明会があったのです。そこで学費から生活費、旅費までサポートしてくれる全額支給の奨学金プログラムがあると知りました。「これだ」と思い、迷わず応募を決めました。

両親には、合格してから報告しました。とても驚かせてしまいましたが。
でも私の中ではもう決めたことだったので、最終的には折れて心から応援してくれるようになりました。

「孤独を楽しむ」中で見えてくるもの

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NUSキャンパス=本人提供

高校3年生でシンガポールへ渡りました。最初の1年は英語漬けの日々。本当に辛かった。

それまで「受験用英語」しか勉強してこなかった。だから最初の英語テストで100点満点中14点しか取れませんでした。中国からきたほかの留学生たちも、同じようにテストの結果は悲惨でした。

言葉以外にも、中国で育った自分とシンガポールで育った子たちとの文化の違いが埋められず、どうやって周りの話題に溶け込んでいいのかも分かりませんでした。

シンガポールの教育現場では、毎回必ずグループプロジェクトやプレゼンテーションなどを通じて、周りとの協調性が求められます。だから、みんなと普段からうまくいっていないと命取りになる。

辛かった時、母がいつも言っていた言葉が救ってくれました。

「Try to enjoy your isolation(孤独を楽しみなさい)」

周りの真似をする代わりに、自分自身とじっくり向き合う。異なる環境に行くと必ず「孤独な期間」は訪れるものです。

その中で、自分のやりたいことに集中して、また新たな視点を得る、というこのプロセスがだんだんと楽しいと感じるようになってきたんです。

動いてみて、考える

大学在学中には、色々な場所で生活し、異なる環境や言語に触れる中で観光客としての旅行では得られない体験を得ました。

交換留学で、ドイツのハイデルベルク大学(Heidelberg University)にも1年滞在しました。

ドイツを選んだ理由は、単純で、大学で教わっていたドイツ語の先生がハンサムだったから。あと、たまたまワールドカップが開催される年(2006年FIFA WORLD CUP)だったので、現地で観戦してみたくて。

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独ハイデルベルク大学のキャンパス=本人提供

当時はハイデルベルクの郊外にある、とても静かな地域の家庭にホームステイをしていました。異なるライフスタイルになじもうとする中で、色々なことを学びました。

まず、ドイツが拠点の世界企業「SAP」(Systems, Applications, and Products in Data Processing)などの最先端テクノロジーの現場に驚愕しました。また、そういった最新のテクノロジーと付き合って生きている人々の、合理的で論理的なものの考え方や生き方。目が見開かされましたね。

きっかけは「ハンサムな先生」だったドイツ滞在も、思い返せばすべての経験が今の私のキャリアや生き方につながっています。

自由広場

台北=本人提供

あとは香港の大学に短期留学で、台湾に会社の事業でそれぞれ半年ずつ滞在しました。自分とルーツを同じくする華僑たちが作り上げた「中華圏」でありながら、全く異なる生活様式や価値観を学べたことは、私自身のアイデンティティについてより深く、客観的に見つめる機会を与えてくれました。

制御不能なテクノロジーは、SFだけで十分。

小学校1年生の時、初めて両親がコンピュータを買ったんです。

当時はまだインターネットにつなげず、マイクロソフトオフィスのソフトを使うくらいでした。それでも、ワードを開いて色々な文字のフォントを試したりパワーポイントをいじってみたりするのが感動的だった。夢中になって1日中キーボードを触ってました。

それ以来ずっと、自分の軸には常に「テクノロジー」があります。

大学の専攻は、マネジメント・インフォメーション・システム(MIS)を選びました。科学には携わっていたかったけれど、エンジニアになりたいとは思わなかったからです。

SFは好きで小説も映画もよく見ますが、SFの世界ではいつも、人間のコントロールが効かなくなってくるとテクノロジーが暴走するように描かれています。

だから、人間がコンピューターとどう向き合っていくべきかという問題の方が、興味がありました。

卒業後はEコマースの会社を2カ所経験しました。最初の会社では事業プロジェクトのため、インドネシア・ジャカルタに半年間滞在しました。しばらくシンガポールにいたので環境を変えたかったし、成長している都市で生活するのは単純に面白そうだったからです。

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ジャカルタ市街=本人提供

調査のために通訳と一緒に地元の市場に通って、オンラインショッピングについての意見を聴きました。そういうコミュニケーションを現地の人たちと取れたのが楽しかったし、消費者が何を考えて行動しているのかという、デジタルマーケティングの世界には欠かせない視点を得ることができました。


誰かと競うのではなく、「自分を知り尽くす」こと


自分の中で大切にしている哲学が、「知己知彼、百战不殆」(彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず)という「孫子」の<謀攻篇>に出てくることわざです。自分と相手を十分に知ってさえいれば、どんなことに挑戦しても必ず成功するという意味です。

「孫子」の著者、孫武は、「成功」の定義を「戦わずして勝つこと」だと説いています。誰かと競い戦えば必ずお互い傷を負い、不必要な損害を生むことになる。

だから、他者との競り合いに勝って喜ぶのではなく、相手と自分をよく知ることで自分だけの道を見つけることこそが、成功への近道だということです。

異なる文化に身をおいてみることは、鏡を見ている感覚に近いかも知れません。違いに気づく瞬間は、自分自身を照らして見るからこそ起こる。

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人には、「Risk-driven(リスク選好型)」と「Risk-adverse(リスク回避型)」という二つの行動類型がありますが、私自身はリスク選好型だと思っています。

周りに同調しながら生きていけば、リスクは回避しやすいかもしれない。でもわたしは、「パッション」を追いかけながら生きていたい。

何かを最初から決めて動くのではなくて、その時の自分の「パッション」に従って柔軟に動き、そして新しい環境に身を置いて孤独を楽しむうちに見えてきた、次の道に進むだけ。

がむしゃらに頑張って後から振り返ると、新たな価値観を得ると同時に、自分についても、もっと分かるようになっている。

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 年に数回、東京にも出張で訪れる。ABEJA Global Teamメンバーと=東京都港区の本社で

今、中国では海外に行きやすくなったことで関心も高まり、親が子供により高い教育を受けさせようと我が子を留学させる風潮があります。

でも、私がシンガポールに飛び出したのは、ただそれに「パッション」(ただならない情熱)を感じて、挑戦してみたらチャンスが与えられたから。

今までの選択に、一つも後悔はありません。

もし機会があれば、今度はアフリカに行けたらと思っているところです。ナイジェリアのビジネスシーンが最近すごく面白そうなんです。

どんな世界が見えるんだろう。

Yuming Jiang (蒋聿敏) 中国、杭州生まれ。シンガポール国立大学卒業後、Eコマース系の企業でプロダクトマーケティングとマネジメントを経験、シンガポールの他にジャカルタや台北でも勤務。現在はABEJAのグローバルチームに所属。

(取材・文:神山かおり 編集:錦光山雅子 写真:Y.OHASHI)

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