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正直、人にはすすめない。でも...文系新卒、AIベンチャーに入ってみた【広報編】

焼け野原からの仕切り直し

2019年3月、年1度の大きな自社カンファレンス「SIX2019」が終わった。

年明けから連日深夜まで残業を続け、記者会見の段取り、関連のプレスリリースの作成や各所調整などに忙殺され、くたくたになっていた。

当時のプレスリリースなどを読み返しても、情報は盛りだくさんだし、言葉や表現は専門用語だらけのこなれないものを作っていた。反省ばかりだった。

その前の年の8月、産休育休を明け、わたしは広報担当になっていた。

インターン時代、1年近く担当した経験のある仕事だ。当時は時代の流れもあって、ディープラーニングの社会実装を手がける企業としてテレビやビジネス誌で紹介されるようになっていたものの、「受け身」な対応しかできていなかったと思う。

本格的に仕切り直したのは、SIXが終わった3月下旬だった。

4月下旬、「いまさら聞けないAI」や「ABEJAコロキアム」というメディア向けの勉強会を初めて開いた。

私ともう1人の広報だけで、いかに多くの記者とつながるか。そのためには記者たちが来たくなるようなテーマで勉強会を開き、そこで多くの記者たちとつながるのがいいのではと考えたのだ。

どんなもんかと思って開いてみると、上場企業の決算発表ラッシュさなかという、最悪のタイミングでありながら40人近い参加があった。

勉強会の様子

1回目のメディア勉強会「ABEJAコロキアム」の様子=2019年4月25日

欠席した記者から「これは参加すべきでした。もう一度個別のレクチャーを」と求められたり、「今までなんとなく分かったつもりでいたけど、勉強になりました」という声をもらったりと、ニーズを改めて実感した。

「テーマでつながる」フラットな関係づくり

手ごたえを感じ始めたのは、3度めの勉強会を控えていたころだったと思う。
勉強会に参加していた経済紙のAI担当記者が「担当が変わるから」と後任を紹介してくれた。挨拶に行き、そこから企画をブレストするなどの縁が生まれ、新年早々のAI連載で取り上げてもらえることにつながった。

このあたりから、記者との付き合い方も変わっていった。インターン時代にやっていた広報は「書いていただく」という気持ちが強く、関係も下手に出なければいけないと思っていた。

勉強会を通じて記者と聞いたり聞かれたりを重ねるうち、相手の「知りたい」に応じて、有効な情報を提供するという「テーマでつながる関係」がしっくりくるようになった。

いままでは物知りな人たちだと思っていたけれど、様々な分野を一から勉強し、どんなことが記事の切り口になるか、素朴に考えている人たちなのだなと思った。媒体に属しながらも、記者個人の問題意識や興味関心で熱心に動いている。

そのうち、彼らがどんなテーマなら関心を持ってくれそうか、少しずつ勘所が見えてきて、社内の話題も客観的な眼で価値判断できるようになった。

そこからブレない自分が生まれてきたと思う。

写真


「専門家」から、知識を教わる

会社に入ってから、いつもどこかで「私は、役に立ててないんじゃないか」という思いがあった。特に「ものづくり」ができるエンジニアが身近にいると、そう思ってしまう。

会社の仕組みが整いはじめ、社内外で各分野の専門スキルを持った人たちが増えてくると、今度は「専門性のない自分」へのコンプレックスも生まれてきた。

よくも悪くも「ロールモデル」がいない環境。ベンチャーの大変さであり、面白さでもある。

真っ白なキャンパスに自由に絵を書いていい状態だったのに、いざとなると既にきれいな絵が書いてある(ようにみえる)周りの人と比べてしまっていた。

一方で、こういう「専門家」たちから、広報戦略の考え方や業務のコツ、ライティングなどを、定期的に個別で教わる時間ももらっていた。うまく言葉にできない悩みも相談すると、経験を踏まえた的確なアドバイスをくれて、仕事をする上で助かることばかりだった。

ベンチャーの採用サイトを見ると、「裁量が発揮できる」「圧倒的にキャリアの成長ができる」と書かれていることが少なくない。でも、私はそういう見方には懐疑的だ。

人材開発・組織開発が専門の中原淳・立教大教授は自身のブログ「突然だけど、今日から、君、管理職ね、はい、よろしく」のリアル:「中小企業の人材開発」というブラックボックスを解明する!?」(2020年2月14日付)で、自らの調査を下敷きに、中小企業で人が育ちにくい理由として、

「中間管理職のマネジメント能力が機能不全に陥っている場合には、新卒・若年層を育成することが難しくなる。それでも仕事を回さなくてはならないので、仕事が属人化し、『個人商店化』する。そうすると、外部からのフィードバックがさらにききにくくなる」
「新卒・若年層の育成は、自分で経験学習を回せるひとが、育つ。そうでなければ、能力開発が機能不全に陥る。すべてが『個人商店内の自己努力』になってしまう」

ーーなどと指摘している。

中原教授の言うとおりだと思う。

ただ、私の場合は経験の少ない中でも、各分野の専門家たちの知見に触れ、日常的にフィードバックしてもらえる環境があった。それはこの会社が、外の専門家ともゆるやかにつながる組織だったことも関係していると思う。
 
いつからか、とても恵まれている環境にいるのかもしれないと気づいて、モヤモヤとした心も晴れていった。

これから先、どんな分野で働いても、人のいいところを観察して盗める柔軟性を持っていたいと思う。


「新卒でベンチャー」はアリかナシか

正直、あまり人にはおすすめしない。笑 
お金も人も仕組みも、何も整っていないからだ。
イメージ先行で飛び込んでしまうと、あとあとツライと思う。

でも、それでキャリアや人生が詰むものではない。

ベンチャーなりの面白さもある。
何もない状態から、会社の事業や仕組みが整っていく過程を楽しめる人、
領域を狭めずに広くやりたい人、新しい産業を作る当事者でいたい人にはおすすめだ。

この人たちと働きたい!とか、いい給与がほしいんだ!とか、働く理由は異なるだろうけど、自分が納得できる選択ができたのなら、別に大手だって、ベンチャーだっていいんじゃない、と思う。

その人の人生なのだから。

私自身は、決まった(と思っていた)レールから一度「異世界」に飛び込んだことで、自分のなかの「こう生きるべき」みたいなシガラミが、いい意味で外れたことはたしかだ。

人は生きてる以上、何らかのバイアスを持つことは避けられない。でも、違う世界を身を持って経験して、世の中いろんな世界があるし、どんな環境でも案外「なんとかなる」と、大学時代よりもずっと自由に物事を捉えられるようになった。

その意味で、この選択をしてよかったと思う。

新卒数年で事業責任者!子会社社長!とか
若手ベンチャー社員のキラキラな情報発信に比べるとずーっと平凡だけど
盛りすぎず、卑屈になりすぎず「等身大」の私を語れただろうか。

あくまでもn=1の体験談ではあるけれど、「ベンチャーに興味あるけど、ぶっちゃけどう?」と悩んでいる人にとって、参考になればなによりだ。

一ノ宮 朝子(いちのみや・あさこ)
1993年生まれ、東京都出身。ABEJA広報担当。2016年に一橋大学法学部を卒業後、学生時代よりインターンをしていたABEJAに参画。AIを活用した店舗解析サービスABEJA Insight for Retailの営業を担当。2018年8月より、現職。2歳児の子育てに奮闘中。趣味は、高校から続けてきたストリートダンス。

シリーズ「文系新卒、AIベンチャーに入ってみた」(全3回)
「大丈夫なの、その会社」それでも私が決めた理由 文系新卒、AIベンチャーに入ってみた【インターン編】

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AIの実装を手がける企業ABEJA(アベジャ)で働くテクノプレナーたちの日常・素顔を発信しています。 テクノプレナー:『ゆたかな世界』を問うリベラルアーツと実現するテクノロジー。この2つをアントレプレナーシップで循環し、推進する行動姿勢を体現する人たち。略して「テクプレ」。

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